「 子どもの本や 4月のお便り」より
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陽気な春の陽に誘われ、なにもかもうっちゃってウキウキとどこかに出かけたくなってしまうことがありませんか。そんな気分になった時はいつも「たのしい川べ」の冒頭で、モグラが春の気配に駆りたてられるようにして、やりかけの大そうじを放りだし、暗い穴の中から野原へ弾むまりのように、飛びだしていくシーンが心にいきいきと浮かんできます。
「たのしい川べ」は、百年以上にわたって子どもから大人まで年令
を越え、読み継がれ愛されてきたファンタジーの名作です。川ベや
森に暮らす小さな生き物たちと自然が織りなす楽しくも、生きる喜
びとぬくもりに満ちた物語です。素朴で無邪気で人の良いモグラと、
面倒見がよくてしっかり者の川ネズミにかよう篤い友情の物語でも
あります。他にも、人づきあいが,苦手で少し気むずかしいけれど、
威厳があって頼もしいアナグマや,うぬぼれ屋であきっぽくオッチョ
コチョイ,でもどこか憎めないヒキガエルなどいろいろな性格の動物
たちが登場します。”私にもそんなところがある”とか”どこかの
誰かさんにソックリ”などと動物たちのユーモラスな言動が身近な
人々と重なって読みながら思わずおかしくなってしまいます。この
物語の魅力をまたことさらに盛りあげているのが「クマのプーさん」
と同じシェパードのさし絵です。この物語の世界の持つ情緒や雰囲気、
物語を通して流れているあたたかさやユーモアと小さな生き物たち
へのこまやかな愛情が伝わってきます。
「たのしい川べ」ケネス・グレアム作 石井桃子訳
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