子どもの本や 阿佐ヶ谷日記  2

東京都杉並区阿佐ヶ谷南1-47-7 03-3314-3455「子どもの本や」では、子どもが心から楽しめる選り抜きの本ばかりを揃えています。

「ベラスケスの十字の謎」 徳間書店

 
日曜美術館という番組は、休みの朝のささやかな楽しみです。先日の、宮廷画家「ベラスケス」の「ラス・メニーナス」(侍女たち)という絵についての解説はとても興味深いものでした。この絵には、スペインのマルガリー王女やその侍女、王と王妃、画家ベラスケス本人そして宮廷につかえていた体の小さい少年と少女などが描かれています。番組では、画家ベラスケスは実はコンベルソ(祖父がキリスト教に改宗したユダヤ人)で地位が低くかったためそのことを隠しながらが画業をつづけ、貴族にまでなり「ラス・メニーナス」の中に描いた自分の胸には貴族の称号である赤い紋章を誇らしげにつけているという解説でした。

       さて、今回是非お勧めしたい本は『ベラスケスの十字の謎』というスペインの
       作家カンシーノの作品です。この作品は「ラス・メニーナス」の中の右端に描
       かれている少年ニコラスの物語です。17世紀当時スペインの宮廷には道化
       や小人などが王族の気晴らし役をつとめており、またさまざまな仕事をして
       宮廷内で特別な地位をしめることもあったのです。 背が伸びなかった少年
       ニコラスは生まれ故郷イタリアを離れスペインにつれてこられるところから
       物語は始まります。一人、異国の宮廷に放り込まれた小人の少年はなんとか
       宮廷になじもうと努めていくうち、宮廷画家ベラスケスの手がける絵の中に
       描かれることとになり・・ベラスケスと出会い「ラス・メニーナス」をめぐる
       不思議な事件に巻き込まれていくのです。
       べラスケスは、道化や小人を作品によくかいていますが、物語に登場する小人
       の少年ニコラスも(絵に中でその隣いる小人の女性)マリバルボラもお話の
       なかでも実にいきいきとまた賢く描かれています。
       ベラスケスが低い身分の出身だったから小人や道化等に共感したという説も
       あるようですが、物語を読む限りそういう人たちが実際に魅力的であったの
       であろう確信します。
       ある時、ニコラスは、ベラスケスから思いもかけない大切なことを頼まれる
       ことになります。それは当初かかれていなかったベラスケスの胸に描かれて
       いる赤い十字の紋章にかかわることなのです。
 
ベラスケスの絵は、その絵の前にたっただけてひきつけられるのもがありますが・・この本「ベラスケスの十字の謎」を読みますと・・絵をみたときにまた一人ひとりの人物に特別な想いを感じながらみることになります。 徳間書店