絵本「しょうぼうていハーヴィ・ニューヨークをまもる」〈リトル・ドッグ・プレス社)は、邦訳されているマイラ・カルマンの作品のうちで、特におすすめしたいものです。
1931年からずっとマンハッタンを火災のたびに守ってきたハドソン川の「消防艇ハーヴィ」。64年の間におんぼろになりくず鉄同然となってしまっていたのです。 ニューヨークっ子たちはそんなハーヴィをお金をだしって買いとり修繕します。 「ハーヴィは古くてすてきな船だけど消防の、しごとをすることはまあぜったいないよね」 とハーヴィを救った人たちでさえそんな風に言っていました。
そしてニューヨークを襲ったあの9月11日のおそろしいできごと。・・ 4日4晩ハーヴィは火災がおさまるまでの間やすまず、働き続けたのでした。・・・・・
マイラ・カルマンの絵本はなにもかもが楽しいのです。絵はとびきり洒落ていますしたっぷりのユーモアで私たち大人をつまらない枠から解き放ってくれます。また、「しょうぼうていハーヴィ・・」はあの悲惨な事件にまつわる話であるにもかかわらず、 人々の温かみや喜びをも存分に感じながらを読み終わることが出来ます。子どもたちは、火災の鎮火に大活躍した船の話として楽しむようです。
今も、ニューヨークのハドソン川に行くと観光船として活躍しているハーヴィに乗ることができるようです。(LI)